Mori-Ôgai-Gedenkstätte Berlin / ベルリン森鷗外記念館・ベアーテ・ヴォンデ

二人の医学者にとっての記念の年、あるいは医学史界からの報告

二人の医学者にとっての記念の年、あるいは医学史界からの報告

2018年も終わりに差しかかった頃、ドイツでは森鷗外の師であり医学史における功労者二人を偲ぶ機会があった。12月3日はマックス・フォン・ペッテン  コーファー生誕200年の日であり、同11日はロベルト・コッホ生誕175年の日であった。立て続けに催しが企画されたことで、ライバル関係にあったふたりの25歳という年齢差が特別際立った。このふたりは全く違う性格であっただけでなく、違う世代に属していたのだ。

ペッテンコーァーの記念式典は、12月3日にドナウモースのリヒテンハイムにある彼の生家横に建つ胸像に献花することで幕を開けた。この式典には、市長のほか郡知事や住民らも参加した。ペッテンコーファーの出身地は、インゴルシュタットやニュルンベルクの近くに位置するノイベルク・アン・デア・ ドナウのそばにある。この辺りはやせた平地で、沼地の水を抜いて開拓された土地だ。彼の生家はもう残っていないのだが、数年前に復元され、碑文が添えられている。
当日午後には、ノイベルク・アン・デア・ドナウの職業学校がペッテン コーファー学校と名付けられ、名前の授与式が行われた。同校の生徒はこの日のために「ペッテンコーファー石鹸」を作っており、これから1年間ペッテンコーファーについてさらに学ぶ予定だ。授与式に引き続いて、医学史家のヴォルフガング・ロッハー教授が講演を行った。教授は、今年7月にペッテン コーファーの伝記『Max von Pettenkofer Pionier der wissenschaftlichen Hygiene(マックス・フォン・ペッテンコーファー:衛生学の先駆者)』(ドイツ語)を出版している。(カール・ヴィーニンガー氏によるペッテンコッファーの伝記は1987年に出版された。植木絢子氏によって2007年に日本語に翻訳され、 『知られざる科学者ペッテンコーフェル —環境医学の創始者—』という邦題で知られている。そこには松下敏夫氏による序文が添えられている。)夕方には、ベルリン森鷗外記念館のキュレーターであるベアーテ•ヴォンデが「モース・  ハウスHAUS im MOOS」において「ペッテンコーファーと日本の弟子たち」という題で講演した。
同月6日から8日にかけてはミュンヘンにおいても記念式典が開催されたが、その中で特筆すべきは2つのシンポジウムだろう。ひとつは国際的な学術 シンポジウム「感染生物学 —感染症学 2018 — マックス・フォン・ペッテンコーファー生誕200年を記念して」で、もうひとつは「マックス・フォン・   ペッテンコーファーと21世紀における彼の意義」だ。そこでは、ペッテン   コーファー賞の授与式も行われた。同賞は2017年に創設され、バイエルンの大学、専門大学で提出された衛生学と医学微生物学に関する優れたディプローム、学士、修士、博士論文に授与されており、賞金は5000ユーロである。
また、ミュンヘンの市立博物館では新な特別展「チフスの街ミュンヘン  ペッテンコーファーとミュンヘン」が開かれている。

ベルリンでは、ロベルト・コッホの175回目の誕生日を記念した式典が彼の名を冠した研究所の図書閲覧室で催された。ここは2年前にロベルト・コッホ研究所の設立125周年を祝して連続特別企画「ロベルト・コッホ・サロン」が行われた場所で、その時は各回の登壇者たちが赤いソファに座り座談会を行った。
今回の式典では、感染症部門部長のマルティン・ミールケ教授が具体例を示しながらコッホの功績を称えた。続いて、同研究所所長のローター・H・     ヴィーラー教授がコッホの曾孫にあたるヴォルフガング・プフール氏に   インタビューを行った。プフール氏の祖母ゲルトゥルートはコッホの唯一の子どもである。インタビューの中で、コッホ家は、ロベルトが少年時代を過ごしたクラウスタールにある家を買い戻して復元したことが述べられた。同式典はロビーと展示室でのささやかなパーティーで締めくくられたが、おみやげとして小さなテレビ型ミニのぞき眼鏡が配られた。ボタンを押すといくつかのコッホの写真を見る事が出来る仕掛けだ。

今日、マックス・フォン・ペッテンコーファー研究所とロベルト・コッホ研究所は協働関係にある。ロバート•コッホ基金が優れた研究を発表した後進者に 授与するポスト・ドクター賞の2018年受賞者は、ミュンヘン大学マックス・   フォン・ペッテンコーファー研究所に在籍するウイルス学者マクシミリアン・ミュンヒホフ博士であった。受賞した彼の研究テーマはHIV感染の分析である。

特別通信員(^^) ベアーテ•ヴォンデ


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